それでは、事前準備をするうえで知っておきたいことシリーズとして、土地についてのお話をさせていただきたいと思います。
私たちが家を建てる土地というのは、それぞれ条件があります。
そして、その条件によって、
どの程度の大きさの建物を建てることができるか、が変わってきます。
ハウスメーカーなんかが、「ボリューム検討」といっているものがあります。
ようは、その土地にどんな形の、どの程度の大きさの家を建てることができるのかを検討することを言っています。
これは専門家ではなければ検討できない、ということではありません。
実は、基本的なルールを知っていれば、ハウスメーカーや工務店ではなくても、ざっくりとではありますが、確認することができます。
そのルール、というのがここで紹介をしたい5つのコトなんです。
で、何を知っておけばよいかと言いますと。
- 建ぺい率
- 容積率
- 北側斜線
- 道路斜線
- 隣地境界との距離
それでは、これらについて一つ一つ見たいと思います。
建ぺい率について
建ぺい率とは簡単にいうと、
土地の面積に対する建物の面積(建物を真上から見たときの面積)の割合
のことです。
これは、建築基準法第53条に定められた規制で、風通しと防災の観点から定められた建築基準法上の基準です。
建ぺい率を計算式で表したものがこちら。
- 建物の面積 ÷ 土地の面積 = 建ぺい率
例えば、100㎡(約30坪)の土地に、60㎡の建築面積の建物を建てた場合、その建ぺい率は60%になります。
地域ごとに「この土地の建ぺい率は○○%」というルールが決められていて、このルールに沿って、家を建てる必要があります。
せっかくの土地を無駄なくギリギリまで建物に使いたいと考える人もいると思います。私たちもそうでした。
しかしながら、建ぺい率が高すぎる家は、防災や風通しの観点から望ましくないとされています。
考えれば分かる話ですが、例えば地震で隣の家が倒壊した場合、隣家との距離が近すぎますとその被害をもろに受けてしまう可能性が高まります。
また、火災が起きた場合も同様で、隣家との距離が近すぎますと、火災の被害を受け、自分の家も燃えてしまいます。
そこで、ある程度の空地を設け、ゆとりある建物を建てるように誘導する目的で、建築基準法によって建ぺい率に制限が設けられています。
建ぺい率についてもう少し知りたい方は、こちらをご覧ください。
容積率とは
容積率とは、
建物を建てる土地の面積に対する建物の延床面積の割合のこと。
これは、建築基準法第53条に定められたルールで、地域個別の環境を維持するために定められた建築基準法上の基準です
容積率を計算式で表すと、以下の通りになります。
- 延床面積 ÷ 土地の面積 = 容積率
こちらもどうやって計算するのか、以下で見てみましょう。
例えば、100㎡(約30坪)の土地に、120㎡の延床面積の家を建てた場合、その容積率は120%になります。
下の図が、容積率のイメージです。
1階 50㎡ + 2階 50㎡ + 3階 20㎡ = 延べ床面積合計 120㎡
延べ床面積合計 120㎡ ÷ 敷地面積 100㎡ = 120%
こちらも建ぺい率と同様に、地域ごとに「この土地の容積率は○○%」というルールが決められていて、この規制に沿って、家を建てる必要が出てきます。
なお、建ぺい率・容積率ともに、計算に算入すべきもの、不算入にしていいものについて、いくつかルールがあります。
こちらの内容については長くなりそうなので、別記事でまとめています。
斜線規制について
斜線規制と呼ばれるものは3つあります。
- 北側斜線
- 道路斜線
- 隣地斜線
これらは、隣地や道路との距離に応じて、家の高さを制限するルールです。
土地の大きなところで家を建てるのであれば、このルールは関係ないかもしれないです。
しかしながら、土地を最大限活用しながら家を建てるのであれば、この斜線規制は非常に重要なポイント。
で、普通の高さの家を建てるのであれば、隣地斜線はあまり重要ではない(この制限を受けない)ので、この記事では北側斜線と道路斜線の2つについて説明します。
北側斜線について
まずは北側斜線なのですが、これは、北側の隣地にある住宅の日当たりに配慮したルールのこと。
基本的には、ルールが適用されるのはこの2つの地域。
第一種及び第二種低層住居専用地域
第一種及び第二種中高層住居専用地域
この地域って何?ていうところですが、これらは用途地域と呼ばれるものです。
法律では、土地を用途ごとに分類することで、住宅や工場などが有効に事業や暮らしを営めるようにしており、この区分けが用途地域のことです。
実は、上の方で出てきた建ぺい率や容積率というのも、用途地域によって、その%が決まっています。
参考までに、用途地域についてはこちらの記事で説明しています。
ちなみに、この2つの用途地域は、名前からも分かるとおり、住宅のための地域となっています。
ようは、人が住む地域であるからこそ、斜線規制を設けて日当たりに配慮しましょう、ということなんですね。
で、このルールが一体どんなものかというと、北側隣地境界線の5mまたは10m上がった高さから、一定の勾配(1:1.25)で記された線の範囲内で家を建てるようにさせ、建物の高さを制限していきます。
文字だとわかりずらいので図で説明すると…
平面で見ると、こんな感じで真北から制限がかかるような形になります。
左側の図のように、真北が隣地境界線と垂直であればこの図のようにまっすぐ制限がかかってきます。
一方で、真北が右の図のように斜めになっていると、この図のとおり、斜めに制限がかかってきます。
そして、次に立面図で見るとこのように制限がかかります。
大体のサイトでこの説明されて終わりなのですが、北側斜線は、これら用途地域に加えて、高度地区に該当する場合もこの規制を受けます。
高度地区、というのは、「街の環境維持や土地利用の増進を図る」ため、建物の高さについてのルールが定められた地区のことです。
東京都だとほとんどの地域がこの高度地区内だと思います。
そして、この高度地区には3つのレベルがあります。
それが、第一種高度地区、第二種高度地区、第三種高度地区です。
これはそれぞれの制限の厳しさを示していて、第一種が一番厳しく、第三種が一番緩い、という感じです。
で、どういうレベルで高さに制限がかかってくるかというと…
種別 | 制限内容 |
第1種高度地区 |
北側隣地境界線の5m上方から1:0.6の勾配 |
第2種高度地区 | 北側隣地境界線の5m上方から1:1.25の勾配。さらに、上記斜線上の15m上方の地点から1:0.6の勾配 |
第3種高度地区 | 北側隣地境界線の10m上方から1:1.25の勾配。さらに、上記斜線上の20m上方の地点から1:0.6の勾配 |
文字だとわかりずらいと思うので、具体的に図で表すとこんな感じになります。
で、大体私が東京の土地探しをしてみていた感じですと、
- 第一種低層の場合、第一種高度地区
- 第一種住居の場合、第二種高度地区(まれに第三種高度地区もあり)
が適用されているところが多かったように思います。
ちなみに、用途地区にかかる北側斜線と、高度地区にかかる北側斜線の両方の制限がある地域の場合は、より厳しいルールが適用されます。
例えば、第一種低層かつ第一種高度地区の場合は、第一種高度地区の制限のルールが適用される、というわけです。
道路斜線について
北側斜線と同様に、道路斜線も勾配を付け、家の高さを制限しています。
これも、道路の日照や、風とおしに支障をきたさないよう、また、周辺に圧迫感を与えないように、家の高さを制限したルールのことです。
で、これも勾配をつけて高さを制限していくわけですが、この勾配のスタート位置というのは、前面道路の反対側の境界線。
平面で表すと、こんな感じになってきます。
勾配については用途地域によって異なるようで、住宅のための用途地域であれば1:1.25となり、それ以外だと1:1.5となっているようです。
つまり、人の住む地域の方が規制が厳しくなっている、ということです。北側斜線と話は一緒ですね。
立面で見ると、こんな感じで制限がかかります。
北側斜線では5mまたは10m上がったところから勾配が始まりますが、道路斜線の場合はそれがありません。
なので、前面道路の幅が狭かったりすると、道路斜線規制の影響を結構受けることになります。
それでは、最後の隣地境界との距離について説明して終わろうと思います。
隣地境界との距離
地区によっては、実はこの隣地との境界の距離について定められていたりすることがあります。
例えば、
「隣地境界線から1.5m以上離れたところから家を建てなければならない」
のような決まりです。
ただ、このような定めがない地域も多いです。この場合、民法上の規定が基準になってきます(民法234条)。
それは、具体的には、50cm。これ以上距離をつめて家を建てることは原則できません。
原則なので、特例もあります。特例は全部で3つ。
- 隣地の所有者に、許可を得ている場合
- 境界線に接して家を建築してもよいという慣習があると認められる場合
- 防火地域又は準防火地域内にあって、かつ、外壁が耐火構造の建物の場合
ただ、正直慣習だとか、許可だとかってあまり聞いたことがないです。
また、実際50cm程度建物を境界から離しておかないと、外壁補修をする際などに足場を組むスペースがなくなってしまうなど、将来的に不都合が生じることも。
なので、現実問題、ある程度の距離を隣地境界線から置いて、家を建てることは大事だと思います。
と、以上が土地について知っておきたい5つのこと(知識編)でした。
これらの知識をどう使って家の大きさや形を確認できるのかは、以下の実践編をご覧ください!