土地について最低限知っておきたい5つのコトの中で、容積率についてさらっと説明しました。
ここでは、容積率について、容積率緩和や前面道路との関係など、もう少し知っておいた方がよいことを記事にしたいと思います。
まずはさくっと容積率についておさらい
容積率とは、
建物を建てる土地の面積に対する建物の延床面積の割合のこと。
これは、建築基準法第53条に定められたルールで、地域個別の環境を維持するために定められた建築基準法上の基準です
容積率を計算式で表すと、以下の通りになります。
- 延床面積 ÷ 土地の面積 = 容積率
こちらもどうやって計算するのか、以下で見てみましょう。
例えば、100㎡(約30坪)の土地に、120㎡の延床面積の家を建てた場合、その容積率は120%になります。
下の図が、容積率のイメージです。
1階 50㎡ + 2階 50㎡ + 3階 20㎡ = 延べ床面積合計 120㎡
延べ床面積合計 120㎡ ÷ 敷地面積 100㎡ = 120%
こちらも建ぺい率と同様に、用途地域ごとに「この土地の容積率は○○%」というルールが決められていて、この規制に沿って、家を建てる必要が出てきます。
ちなみに、用途地域については以下で記事にしています。
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容積率は前面道路の制限を受ける
で、この容積率なんですが、実は前面道路の幅によって、定められている容積率が使えなくなってしまうことがあります。
具体的にどういうことかというと…
前面道路の幅員が12m以上の場合:定められている容積率がそのまま適用できる
前面道路の幅員が12m未満の場合:
- 前面道路幅員(m) × 係数(原則:住居系は0.4、その他:0.6)
- 用途地域ごとに定められている容積率と確認
- 1と2を比較し、いずれか小さい方が適用
となります。
これを、例を使って説明します。
例その①
第1種住居専用地域で、建ぺい率が60%、容積率が200%とされる土地があり、前面道路の幅員は5mとします。
この場合は、
5.0m * 0.4 = 2.0 (200%)
となり、最大値の容積率200%を適用できます。
例その②
第1種住居専用地域で、建ぺい率が60%、容積率が200%とされる土地があり、前面道路の幅員は4mとします。
この場合は、
4.0m * 0.4 = 1.6 (160%)
となり、最大値の容積率200%は使えず、160%が適用されます。
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前面道路の幅員が4.0m以下の場合はどうなるのか?
ここで疑問が一つ。それは、
前面道路が2mや3mの幅の場合、「80%や120%の容積率のみしか使えない?」ということ。
東京都心の場合、住居系地域の道路というのは、42条2項道路と呼ばれる、道路幅が4.0m未満の道路に面した土地が数多くあります。
ちなみに、私たちの家の周りの道路もこの42条2項道路に面しています。
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42条2項道路とはいったい何?建築基準法上の道路とは?
42条2項道路とは、「みなし道路」とも呼ばれる、建築基準法上の道路の一つです。
詳しくは説明しませんが、その他にも以下のような道路があります。
1 |
第42条第1項第1号 |
道路法によるもの(一般国道、都道府県道、市町村道などの公道) |
2 |
第42条第1項第2号 |
都市計画法、土地区画整理法などによるもの(開発道路) |
3 |
第42条第1項第3号 |
建築基準法が施行された1950年(昭和25年)11月23日以前から存在するもの |
4 |
第42条第1項第4号 |
道路法や都市計画法により2年以内に事業が行われる予定があり、特定行政庁が指定したもの |
5 |
第42条第1項第5号 |
特定行政庁が位置を指定したもの(位置指定道路) |
6 |
第42条第2項 |
建築基準法が施行される前から存在する幅員4メートル未満で特定行政庁が指定したもの(2項道路、みなし道路) |
そして「建築基準法上の道路」は原則として幅員4メートル以上の道路とされています。
つまり、4メートル未満の道路は、道路ではないんですね。
しかし、市街地には、道路に関する規定が制定される以前から4メートル未満の道路というのが、数多く存在していました。
そのため、もしも、4メートル未満に面した土地では家を建てることができない、と適用してしまうと、建物の新築、増改築ができない場所が多数に…
結果、このような不都合を解消するために設けられたのが42条2項道路なんです。
なので、建築基準法42条2項は、
「当該規定が適用されるに至った時点で既に建物が並んでいた道路で、市町村長または都道府県知事が指定したものについては建築基準法上の道路とみなす」
と規定しているんです。
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42条2項道路に関連するセットバックとは?
以上のことから、42条2項道路と呼ばれる4m以下の道路は、幅員を4mとみなします。
つまり、幅が1mだろうが、2mだろうが、0.4もしくは0.6をかけて、容積率を算入することになるんです。
しかしながら、実は代償もあります。
それは、一部自分の土地を道路として提供すること。つまり、土地の面積が減ってまうわけです。
これを、セットバックと言います。
セットバックというのは「後退する」という意味です。
で、どのように後退しなければならないかというと、こんな感じ。
- 道路の反対側が宅地の場合は、道路の中心線から2mセットバックする
- 道路の反対側が崖、川、線路等の場合。道路の端から4mセットバックする
例を使って見ていきます。
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1. 道路の反対側が宅地の場合
下のような、3.0mの道路幅があるとします。
この場合、どのようにセットバックをしなければならないかと言うと、道路の中心から2m後退させなければいけないので、土地を0.5m部分まで後退させなければなりません。
つまり、このグレーで囲まれている部分についてが土地面積の減少部分になります。
この部分を除いた土地面積を使って、容積率もそうですし、建ぺい率についても考える必要があります。
もう少し説明します。
例えば、用途地域が第1種住居専用地域で、もともとの建ぺい率は60%、容積率は200%だとして、前面道路が3.0メートルだったとします。
そして、以下のように道路に対して土地があるとします。
ここでは、
セットバック 0.5m × 接地面の長さ 14.0m = 7.0m2
土地面積が減少することになります。
結果、
112.0㎡ – 7.0㎡ = 105.0㎡
がセットバック後の土地面積となります。
また、容積率は、前面道路が4.0メートル以下なので、
200% ➡ 160%
に減少します。
つまり、元々の土地、そして用途地域の条件によると、
セットバック前の土地面積 112㎡ × 用途地域の容積率 200% = 224㎡
となりますが、現実に建てることができるのは、
セットバック後の土地面積 105㎡ × 用途地域の容積率 160% = 168㎡
と、延床面積に使うことのできる上限が低くなります。
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2. 反対側に河川等がある場合
先程の例と同じように、前面道路の幅員が3.0メートルだとします。
この場合、道路の反対側に河川や崖がある場合は、道路の反対側から4.0メートルを確保しなければいけませんので、以下のように、敷地面積が1.0メートルも後退し、敷地面積が減少することなります。
つまり、反対側に河川や崖があり、セットバックをする場合は、通常のセットバックに比べて敷地面積がより多く減少することとなります。
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ちなみに…
スーモなどの土地売買の情報サイトを見ていると、前面道路が4.0メートル未満にも関わらず、土地のサマリーページ(写真なども併せて掲載されている部分)の容積率が、制限前のまま記載されているものをよく見ます。
また、セットバック前の土地面積が記載されていたりするので、この辺りの情報を注意深く見ることが必要です。
なので、土地を探すときは、単純な建ぺい率や容積率だけを見るのではなく、
容積率が本当に正しいのか、前面道路はどの程度なのか
記載している土地面積は、セットバック前後どちらの広さを言っているのか
しっかりと確認する必要があります。
後、余談ですが、もし車を使いたいとなると、4.0メートル未満だと結構駐車も大変だったりします。。。
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前面道路が2つある場合は、どちらの幅員を採用する必要があるのか?
接地道路が2面に面している場合(角地のような場所)、どちらの前面道路を基準として、容積率を計算すべきなのでしょうか?
正解は、「幅員が大きい方」です。
つまり、上の図で言うと、5.0mの幅員を軸に、容積率を計算します。
ただし、3.0メートルの部分は、42条2項道路に該当しますので、セットバックを行い、土地面積を減少させる必要があります。
現実的なことをお話しすると、東京都心の場合はこうした角地に面した道路が両方とも4メートルに満たない、ということも良くあります。
ちなみに、私たちが家を建てた土地も角地でしたが、片方4.0メートル、もう片方は3.0メートルでした。
用途地域としては1種住居で200%の容積率が適用される土地でしたが、結局は160%の容積率を使い、家を建てることになりました。
なお、1種低層住宅専用地域の場合は、私たちが探していた時の感覚として、容積率は大きくて150%であるところが多かったように思います。
そのため、42条2項道路に面している場合、セットバックによる土地面積の減少は発生する可能性はありますが、容積率自体が小さくなる、というケースはこの用途地域の場合は少ないのではないかと思っています。。
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容積率緩和について
では、次に容積率の緩和についてのお話を少し。
基本的に、家の住むためのスペースは延べ床面積に含めなくてはいけません。
しかし、ある一定の要件を満たすことで、「容積率の計算に含めなくてよいよ」となる場合もあります。
ここでは、容積率不算入について、代表的なものについていくつか紹介したいと思います。
ちなみにこの緩和についての知識は、小さな土地で上限一杯に家を作りたいときに役立つように思います。
というのも、狭小の土地で家を建てる場合、容積率や建ぺい率ぎりぎりに建てることができるよう、色々と工夫していくことが大事だからです。
どういったものは容積率の計算に含まれないのかを理解しておけば、様々な方法を考え、より自分の希望に合った家を建てることができる可能性が広がります。
では、早速見ていきましょう!
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1. 車庫(自動車車庫等)
車庫は、建物の延べ床面積の1/5までであれば、容積率の緩和を受けることができます。
以下のような合計120㎡の延べ床の建物があったとします。
120㎡ × 1/5 = 24㎡
ですので、この数字が、容積率に算入しなくてよい上限になるわけです。
つまり、この図の場合、車庫は15㎡ですので、24㎡以下となり、容積率の計算から丸々外してよいことになります。
結果、建ぺい率や斜線規制等の他の規制をクリアしていれば、この15㎡分は、他の部屋に当てることができます。
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2. 防災用備蓄倉庫
この写真はでかすぎますが(笑)
防災用備蓄倉庫とは、災害に備えて設置される倉庫のことです。
なので、防災に関わるグッズ(非常食や水、簡易トイレ)などを収納するスペースになります。
「倉庫」となってはいますが、家で言うと、クローゼットのような収納箇所だと思っていただければ良いかと思います。
この倉庫の場合、建物の延べ床面積の1/50までであれば、容積率の緩和を受けることができます。
つまり、100㎡の延床の場合は、2㎡ということになります。
非常に小さい容積率緩和となりますが、狭小の土地で家を建てる場合は、「少しだけ、容積率をオーバーしてしまう」といったことが良くあります。
そのため、この容積率緩和を適用すれば(例えば、収納としていた部分を防災用備蓄倉庫にする)、この「少しだけオーバーしている」部分を解消することができます。
なお、「防災用備蓄倉庫」であるが故に、用途の制限は勿論あり、基本は「防災用グッズ」を置く場所になります。
そして、「防災備蓄倉庫」と分かるように設置しなければいけない(プレートを扉につける等)ので、この部分がインテリアの観点からはダサく、デメリットとはなります。。。
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3. ロフト(小屋裏収納)
基本的な条件としては、
- 天井の高さが1.4m以下である
- ロフトがある階の2分の1以下の面積
- はしごが固定されていない
という条件を満たせば延べ床に含まれず、容積率の計算の対象外となります。
例えば、ミサワホームが非常にこのロフトを押し出しています。
「蔵のある家」としてスペースを有効に活用した家づくりを展開しているのです。
このロフト、様々な面で非常に有効だったりします。
例えば、東京では防火地域・準防火地域に該当する地域がほとんどです。
そして、特に準防火地域においては、2階だてか3階建てかのよって基準、かかるコストが変わってきます。
要するに、2階建ての方が規制も緩いですし、コストも安いということです。
そこで、ロフトを活用することで、2階建+1.4メートル以内のロフトを設置することで、緩い規制の中で家の中に広々とした空間を作ることができるようになります。
また、例えば、容積率ぎりぎりで建てている場合で、更にスペースが欲しいとなった場合も、ロフトをつくれば、その分家を広くすることができます。
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4. 地下室
地下室については大きな㎡のスペースを、容積率に含めなくてよくなります。
この緩和を受けることのできる要件としては、以下の3つ。
地階であること
➡ 地盤面よりも下にある必要がある=地下室であるということを言っています
地盤面から地階の天井が1.0メートル以下であること
➡ 1.0メートルであれば、地盤面より高くても大丈夫ということです
住宅の用途であること
➡ 住むためのスペースとして使った場合で、地下に駐車場などをつくった場合は、この容積率緩和は適用されません
この3つを満たしていれば、建物の延べ床面積の3分の1までの緩和を受けることができます。
例えば、下の図のような階数と延床を持つ家を建てたとします。
家の総延床は170㎡(20+50+50+50)となりますが、地下室の基準を満たした場合、
170㎡ × 1/3 = 約56.7㎡
まで、地下室については容積率の計算に算入しなくて良くなります。
つまり、この場合、50㎡の地下室は丸々容積率からは外れることになります。
例えばですが、東京の中で特に都心で家を建てようと考えた場合、坪単価が非常に高いために狭小の土地を買うのが精一杯、という方が多くいると思います。
また、1種低層地域の1種高度規制の場合は、斜線規制も厳しいです。その結果、高い建物を建てること自体が土地要因で難しかったりします。
その点で、逆に地下にスペースを広げることで、容積率の緩和が受けることができ、結果として空間を広く活用することができます。
ちなみに、地下室のメリットはその他にもいくつかあります。
- 家全体の耐震性がアップ(地下を深く掘り、コンクリートで地下室を作るため)
- 外の騒音が聞こえにくい
- 地下室で出す音が外へ漏れにくい(ホームシアターや、ピアノ室など、大きな音が出る部屋に最適)
- 外気温の影響を受けにくく、地熱は変化が少ないので夏涼しく冬あたたかい(ワインセラーなどに最適)
一方で、地下室は通常の施工に比べて施工の技術や近隣への配慮が必要であるため、
- 工期が長くなる
- コストが増加する
というデメリットもあるようです。
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5. ベランダ・バルコニー・テラス
これらについては、外壁面からの突出幅が2メートル以下の部分は延べ床面積には含まれません。
また、庇(ひさし)などの壁で囲まれていない外側の空間も、2メートル以下であれば延べ床面積に含まれません。
2メートルよりも幅が出ている場合は、その突出したところから2メートルを差し引き、残った部分について延床面積に算入されることとなります。
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複数の容積率緩和は併用できるのか?
結論としては、それぞれが適用可能です。例えば、地下室とビルトインガレージがある家があるとします。
この場合、総延べ床面積は170㎡ですが、
車庫: 170㎡ × 1/5 = 34.0㎡
地下室: 170㎡ × 1/3 = 約56.7㎡
が、それぞれ使える緩和部分となります。
これだけ容積率を緩和できると、より多くの面積を居住空間に使うことができるようになり、希望にあった家を建てることができる可能性がぐっと高まります。
と、つらつら書いてきましたが、以上が容積率やその緩和について、そしてそれに関連した前面道路やセットバックについての話でした!
- ・土地について最低限知っておきたい5つのコト(知識編)
- ・土地について知っておきたい5つのコト(実践編)
- ・建ぺい率って一体何? 緩和条件についてもざっと解説!
- ・用途地域って何?自分が持っている土地の用途地域は簡単に調べられます!