土地について最低限知っておきたい5つのコトの中で、建ぺい率についてさらっと説明しました。
ここでは、建ぺい率について、建ぺい率の緩和や建ぺい率に算入しなければいけないことなど、もう少し知っておいた方がよいことを記事にしたいと思います。
まずはさくっと建ぺい率についておさらい
これは別記事でも同じことを書いていますが、建ぺい率とは簡単にいうと
土地の面積に対する建物の面積(建物を真上から見たときの面積)の割合
のことです。
これは、建築基準法第53条に定められた規制で、風通しと防災の観点から定められた建築基準法上の基準です。
建ぺい率を計算式で表したものがこちら。
- 建物の面積 ÷ 土地の面積 = 建ぺい率
例えば、100㎡(約30坪)の土地に、60㎡の建築面積の建物を建てた場合、その建ぺい率は60%になります。
これは用途地域ごとに「この土地の建ぺい率は○○%」というルールが決められていて、このルールに沿って、家を建てる必要があります。
ちなみに、用途地域については以下で記事にしています。
建ぺい率の緩和について – 代表的な緩和について知ろう
建ぺい率というのは、ある一定の条件を満たすと、建ぺい率の制限が緩和されます。
例えば、建ぺい率が60%の用途地域で、一定の条件を満たす土地であれば、70% – 80%までの大きさの家を建てることが可能になります。
この建ぺい率の緩和措置は、狭小の土地や坪単価の高い家を建てる際には大きなメリットとなります。
例えば、60㎡の土地で、建ぺい率が60%の土地があるとします。
この土地では、通常は建築面積が36㎡までの建物しか建てることができません。
36㎡というのは、坪に換算すると、約11坪。畳数に換算すると、約22畳。
例えば、リビングは20畳最低欲しい!と思っても、1階当たりでこれしかスペースが確保できないとなると、20畳のリビングは不可能です。
しかしながら、緩和によって70%まで建ぺい率が使えるようになると、建築面積が42㎡までの家を建てることができます。
42㎡というのは、畳数に換算すると、約25.5畳。
このスペースがあれば、階段を除いて何とかぎりぎり20畳のリビング確保が可能になります。
また、このような建ぺい率緩和は、3階建てを建てる時にメリットがあります。
例えば、以下の記事の例②で、斜線規制がかかる例を紹介しています。
この例では、3階部分が斜線規制がかかってしまい、容積率を一杯に使えきれない可能性がある、となっていました。
しかしながら、これが緩和されて建ぺい率が70%になれば、1階当たり
90㎡ × 70% = 63㎡
となり、1階と2階でそれぞれこの㎡を確保できれば、3階部分が斜線規制で使えなくなっても、容積率一杯に使うことができるようになります。
例えばですが、
1階 63㎡ + 2階 50㎡ + 3階 22㎡ = 135㎡
なんかにして、容積率一杯使うような形です。
このように、建ぺい率の緩和は様々なメリットをもたらしてくれます。
それでは、これから緩和条件となる事例について、いくつか見てみたいと思います。
1. 角地緩和
角地とは、2つの道路がまじわったかどに面した土地のことをいい、特定行政庁が指定した角地などは、10%の緩和を受けることができます。
ここで注意しなければいけないのは、特定行政庁が指定したという部分です。
角地などにおける建ぺい率の緩和は、特定行政庁ごとに基準が異なっています。
そして、自治体の条例によって具体的な適用要件が定められているのです。
例えばですが、東京都目黒区の角地緩和についての条件はこんな感じ。
[条文 目黒区建築基準法施行細則第45条]
法第 53 条第 3 項第 2 号の規定により区長が指定する敷地は、その周辺の 3 分の 1 以上が道路又は公園、広場、川その他これらに類するもの(以下この条において「公園等」という。)に接し、かつ、次の各号のいずれかに該当するものとする。
(1) 2 つの道路(法第 42 条第 2 項の規定による道路で、同項の規定により道路の境界線とみなされる線と道との間の当該敷地の部分を道路として築造しないものを除く。)が隅角120度未満で交わる角敷地
(2) 幅員がそれぞれ 8 メートル以上の道路の間にある敷地で、道路境界線相互の間隔が 35メートルを超えないもの
(3) 公園等に接する敷地又はその前面道路の反対側に公園等がある敷地で、前 2 号のいずれかに準ずるもの
いつも思うのですが、法律というのは本当にわかりずらく書かれてます。。。
これを簡単に説明していくと、
3 分の 1 以上が道路又は公園、広場、川その他これらに類するものに接し
➡ 土地が道路や公園等に接している部分が、1/3以上であれば良いですよ、という意味です。図であらわすと、以下のような感じだと思います。
隅角120度未満で交わる角敷地
➡ 以下のようなことを意味しています。
幅員がそれぞれ 8 メートル以上の道路の間にある敷地で、道路境界線相互の間隔が 35メートルを超えないもの
➡ このような土地の方が珍しいですよね。どちらかというと、大規模住宅を建てるようなときに適用されるルールのように思います。
以上のように、適用要件があるので、角地であれば必ず緩和されるということではありませんので、注意が必要です。
なお、このような角地の角にあたる部分(出隅)は、削って隅切りし、空地にしなければなりません。この空地には、何も作ることができません。
隅切りは大きく、建築基準法による制限と、各自治体の条例で定められているケースの2つにわかれます。
法規については既に定められているのでよいのですが、厄介なのが、自治体によって隅切りについてのルール。
自治体によってルールが違うので、角地に家を建てる場合はちゃんと確認する必要があります。
多くの場合は、「一定の道路幅員(6mとするところが多い)未満の道路が交わる角(120度未満が多い)に接する角地では、空地としなければならない」と定められているようです。
ちなみに私たちが買った土地も角地で、隅切りが必要となりました。
そして、こうした部分については、ハウスメーカーの方で全て確認してもらいました。
2. 防火地域における建ぺい率の緩和
まず、「防火地域」の区域で「耐火建築物」にて建物を建てる場合、建ぺい率が10%緩和されます。
というか、防火地域って何?と思ったかもしれません。
ザックリいいますと家を建てる区域というのは、「防火地域」、「準防火地域」、「その他の地域」の3つに分かれています。
防火地域および準防火地域は、簡単に言うと、火事を防ぐ目的の地域地区です。
住宅が密集しているような地域では、火事が一旦発生すると、連鎖的に火が燃え移り、その地域に大きな被害を発生させる可能性があります。
そのため、こうした大きな被害を防ぐために、その地域に建てられている建物に、「一定の基準」を設けることで、こうした被害を最小にしようというのがこの地域の意図です。
なお、規制が厳しい順で言うと、次のようになっています。
- 防火地域 > 準防火地域> その他の地域
東京23区で言うと、ほとんどの地域が防火地域、もしくは準防火地域であるのではないでしょうか。
次に、「耐火建築物」ですが、これは建物の種類のことです。
建物の種類は大まかには4つあります。
- 耐火建築物
- 準耐火建築物
- 技術的基準適合建築物
- 普通の木造建築物
簡単に言ってしまうと、これは「どの程度火に強いかどうか」を示すものです。
この順の通り、耐火建築が一番火に強く、普通の木造建築物が一番火に弱いです。
で、コストも勿論、この順番で高くなっていくわけです。
つまり、ここで言うと防火地域での建ぺい率の緩和というのは、
- 防火地域という「一番規制が厳しい地域(防火地域)」で、
- 「一番火に強い種類の家(耐火建築物)」を建てれば、
- 建ぺい率をもう10%増やして家を建てていいですよ、
ということになります。
なお、階数や面積に応じて防火地域・準防火地域では次のようなルールが定められています。
# |
認められる 建築物の種類 |
防火地域 |
準防火地域 |
1 |
耐火建築物 |
階数3以上 |
地上階数4以上 |
2 |
耐火建築物 or |
上記以外の建築物 |
地上階数3以下 |
3 |
耐火建築物 or |
延べ面積500㎡以下 |
|
4 |
普通の木造建築物 |
地上階数が2以下の建築物 |
ここで言うと建ぺい率の防火地域での緩和というのは、
3階以上もしくは100㎡以上の家を建てようとしているのであれば、無条件に10%緩和が適用
2階以下もしくは、100㎡に満たない家を建てようとしている場合、耐火建築物で建てれば、10%緩和が適用
という意味になります。
しかしながら、準耐火建築物から耐火建築物にする場合にはコスト増にもなります。
かつ、木造での耐火建築というのは技術的要件が難しいことを心に留めておく必要があります。
また、その用途地域の建ぺい率が80%の場合、上記の耐火建築物の緩和もしくは角地緩和の緩和を受けた場合、緩和率は10%ではなく20%となり、建ぺい率が80%から100%に緩和されます。
ただ、この緩和はあまり関係する方はいないと思うので、雑学程度にとどめていけばよいのではないかと思います。
3. 準防火地域における建ぺい率の緩和
私たちは、この建ぺい率の緩和が多くの人に影響を与えるのではないかと思います。防火地域よりも、準防火地域に住む方の方が多いからです。
- 2019年6月25日に改正建築基準法が全面施行されました。
この中の改正の一つで、準防火地域でも延焼防止性能の高い建築物(準耐火建築物)について、建蔽率を10%緩和することができることとなりました。
これは、準防火地域に住む方々にとって非常に良いニュースであると言えますが、この緩和については私たちの方ではよくわからないので、該当しそうな場合はハウスメーカー・工務店と相談されることをおすすめします。
複数の緩和条件を満たした場合、建ぺい率はどのように緩和されるのか
緩和条件を複数満たしている場合というのは、「角地+耐火建築」のような建ぺい率緩和条件に複数該当する場合のことです。
この場合ですが、それぞれの条件毎に緩和されることとなります。
つまり、2つの緩和条件を満たせば、建ぺい率は10% + 10% = 20%ということになります。
例を挙げると、建ぺい率が60%の準防火地域で、角地の土地で、準耐火建築物を建てようとした場合、60%から80%に建ぺい率が変わり、この条件内で家を建てることができるようになります。
ただし、現実問題、80%使うのは難しいのではないかなーと。
実際には隣地との最低限離すことが必要な距離ですとか、ガス管や水道管の引き込みなどの関係で、ある程度敷地に幅を持たせなければなりませんので。。
とここまでが建ぺい率についてと、建ぺい率の緩和条件についてでした!