ここでは、建ぺい率、容積率の基になっている用途地域について記事にしたいと思います。
用途地域っていったい何なのさ
土地について最低限知っておきたい5つのコトで、建ぺい率・容積率の制限についてお話しました。
この建ぺい率・容積率というのは、用途地域によってパーセンテージが異なります。
というのも、街には、人が住んでいるような「住宅街」だけはなく、様々な機能を併せ持っています。
例えば、
- ものをつくっている「工業」の機能
- ビルなどが集積しており、人が働くことができるような「商業」の機能
- 人が休みに遊びに出かけるこたができるような「娯楽」の機能
などです。
これらはどれをとっても必要な機能ですが、同じ地域に、異なる目的の建物が混在していると、利用環境の悪化や、生産性の低下などを招く恐れがあります。
例えば、人が住んでいる家の横に、大きな工場があったり、いかがわしい店などが隣接していたりしたらどうでしょう。
いかがわしい店があったら、子どもの教育によくないですし、工場なんかがあったら健康被害が心配。
つまり、住みにくいことは簡単に想像することができると思います。
そこで、都市計画法という法律の第9条で、土地を効率的に活用することを目的として「用途地域」を定めています。
用途地域はどの位に分かれているの?
「用途地域」は13種類に分かれており、それぞれ建ぺい率・容積率の制限が異なっています。
以下がそれぞれの制限の条件となります。
# | 用途地域 | 簡単な説明 | 建ぺい率 (%) | 容積率(%) |
1 | 第一種低層住居専用地域 | 主に2階建てが多い住宅エリア低層住宅のための地域で、閑静な住宅街を指す。小規模なお店、事務所を兼ねた住宅、小中学校などが建てられる。 | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 |
2 | 田園住居地域 | 農業用地と低層住宅が調和。農業用地と低層住宅が混在する地域。農業の利便性を図りつつ、住み良い環境が守られている。 | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 |
3 | 第二種低層住居専用地域 | 2階建てが多く小規模なお店も点在。主に低層住宅のための地域。小中学校などのほか150㎡までの小規模なお店などが建てられる。 | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 |
4 | 第一種中高層住居専用地域 | 3階建てが多く斜線制限の影響も。中高層住宅のための地域。病院、大学、500㎡までのお店などが建てられる。 | 30・40・50・60 | 100・150・200・300 |
5 | 第二種中高層住居専用地域 | 低層のマンションが中心。主に中高層住宅のための地域。低層マンションや病院、大学などのほか、1,500㎡までのお店や施設が建てられる。 | 30・40・50・60 | 100・150・200・300 |
6 | 第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域。3,000㎡までのやや大きめのお店や事務所、ホテル、小規模のボーリング場なども建てられる。 | 50・60・80 | 200・300・400 |
7 | 第二種住居地域 | 商業施設の建設が緩和されたエリア。主に住居の環境を守るための地域。カラオケボックスや自動車教習所なども建てられる。 | 50・60・80 | 200・300・400 |
8 | 準住居地域 | 道路の沿道に広がる住宅エリア。道路の沿道で、駐車場や小規模な自動車関連施設などと住宅が調和した地域。 | 50・60・80 | 200・300・400 |
9 | 近隣商業地域 | 商店街が賑やかなエリア。住民が日用品を買い物するための地域。敷地に対して建物を大きくできるので狭小地でも広い延床面積が可能。第三種高度地区が多く、天井を斜めにせずに高さを出せるという特長がある。 | 60・80 | 200・300・400 |
10 | 商業地域 | 駅周辺や大通り沿いの商業エリア。駅周辺や大通り沿いなど、商業施設をはじめ銀行、映画館、飲食店などが集まる地域。住宅や教育施設、病院も建てることができる。 | 80 | 200・300・400・500・600・700・800・900・1,000 |
11 | 準工業地域 | 作業場やお店などが点在。主に環境に悪い影響をもたらすおそれのない軽工業の作業場やサービス施設が点在。危険性の高い工場は建てられないが、住宅や教育施設、病院も建てることができる。 | 50・60・80 | 200・300・400 |
12 | 工業地域 | 工場が多い地域ながら住宅やお店はOK。主に工場が多い地域。住宅やお店は建てられますが、教育施設や病院は建てることができない。 | 50・60 | 200・300・400 |
13 | 工業専用地域 | ほぼ工場以外の建物は建てられません。 | 30・40・50・60 | 200・300・400 |
この中で#1から8が住居地域となっています。
そのため、多くの人はこの地域で家を建てることとなります。ちなみに私たちが建てた家の土地は、1種住居です。
#9 から12でも家を建てることはできますが、この地域の目的のメインは居住ではないので、高い建物が建ったり、工場が建ったりします。
そのため実際の所、家を建てるためには適さない地域です。
ただ、現実問題、#9から12のような用途地域の土地というのは、土地を探していてもなかなか見ないのではないかなーと思っています。
私たちが探していた中で、#9 -#11については見ましたが、#12はありませんでした。
ちなみに、私たちが探していた地域では、
第1種低層住居専用地域
第1種住居地域
の土地がほとんどであったと記憶しています。
そして、上のリストでは制限について様々なパーセンテージが書かれていますが、これは実際その市区町村によって異なります。
で、これも余談なのですが、私たちが土地を探していた地域では、
- 第1種低層住居専用地域:建ぺい率:50% or 60%、容積率:80% or 100% or 150%
- 第1種住居地域:建ぺい率:60%、容積率:200%
という組み合わせが多かったように思います。
自分の土地の用途地域を調べる方法
用途地域って上にも書いた通り、市区町村によって異なるわけです。
これを調べる方法っていうのは簡単な話です。
「〇〇市 用途地域」でググればよいです。
市区町村によって、用途地域の見せ方は違うんですが(データべースで出てくるところもあれば、PDFなんかで出てくる場合もある)、大体この検索で確認できます。
ちなみに、同様のマップに高度地区に関する制限についても記載されていることが多いので、これで斜線規制の影響についても確認できてしまいます。
例えば、東京都の杉並区で調べてみますと…
杉並の場合は、用途地域がわかるリンクまでは階層深くなってしまってますが、こんな感じで他の市区町村の場合も調べることができます。
用途地域がまたがった場合の考え方
最後に余談ですが、問題です。
下の図のように用途地域がまたがった場合、どのように建ぺい率、容積率を考えるべきでしょうか?
こうしたまたがった土地に家を建てる場合、実は建ぺい率や容積率の他にも斜線規制等色々と影響を与えてきます。
しかしながら、建ぺい率・容積率については、この2つについては単純です。
- それぞれの用途地域ごとに建築面積・延べ床面積の最大値を計算
- それぞれの最大値を合計した数値を、合計の敷地面積で割る
この計算方法によって、その土地に対しての建ぺい率・容積率が計算されます。。
これを「加重平均」ともいいますが、具体的に計算してみましょう。
まず、用途地域ごとに以下の図のように計算します。
そして、この計算した数値を、それぞれ土地面積の合計した数値で割ります。
- 建ぺい率: (第1種低層 建物面積 20m2 + 1種住居 建物面積 36m2) ÷ 敷地面積合計 100m2 = 56%
- 容積率: (第1種低層 建物面積 40m2 + 1種住居 建物面積 120m2) ÷ 敷地面積合計 100m2 = 160%
すなわち、この敷地面積では、建ぺい率:56%、容積率:160%を上限に、家を建てることができる、ということになります。
なお、この場合、計算された建ぺい率の限度以内であって、その他の規制をちゃんとクリアしていれば(隣の境界線からの距離など)、建物の配置はどこでもよいそうです。
では、以上が用途地域についての説明でした!